グロービスMBA 第五部 人・組織 要約 後編

グロービスMBA 第五部 人・組織 要約 後編

今回は、書籍「グロービスMBAマネジメント・ブック」第五部「人・組織」の要約となる後編記事をお届けします。

組織と人事システム

組織文化

組織文化は、「組織構成員が共有する信念・価値観・行動規範の集合体」と定義でき、構成員の行動を規定する。そのため、企業としては何らかの形でコントロールすることが望ましく、環境変化に合わせて変える必要がある。
企業は、組織文化を直接的にコントロールできないが、間接的に影響を与えることはできる。そのためには、組織固有の行動パターンを観察し、具体的に把握する必要がある。また、それだけではなく、サブ・カルチャーやカウンター・カルチャー等に注目し、個々に分解して把握することも重要である。

組織文化の形成

生成段階では、個々の構成員の価値観・信念等が衝突しあうことで、組織における判断基準・行動規範・価値観が形成される。このプロセスでは、リーダーシップを発揮する人の理念・哲学が大きな影響を持つ。次の浸透段階になると、儀式・逸話・経営陣のメッセージ等具体的な形になったものや、既に組織文化を共有している構成員との交流等を通して、他の構成員に伝播する。

組織文化の機能

組織文化は、次のような機能を持つ。

組織文化の機能

組織設計

組織設計とは、企業戦略を遂行するために、個々の業務をどのように組み合わせ、どのように行うかを決定することである。したがって、「組織図」で表される静的な側面に加え、業務プロセス・意思決定プロセス等の動的な側面も考慮しなければならない。
米国経営史学者のA.D.チャンドラーは、「組織は戦略に従う」と述べた。彼は『経営戦略と組織』の中で、多角化戦略をとる企業の組織形態は、従来の機能別組織から事業部制組織へ移行することを示し、戦略に合わせて最適な組織を設計していくべきだと論じた。

組織構造の決定要因

組織設計にあたって考慮すべき要素には、次のものが挙げられる。

組織構造の決定要因

組織形態

組織形態とは、決定要因に基づき、組織構造の形である「組織図」を描いたものである。決定要因に加えて、外部環境・事業特性・戦略・HRポリシー等を考慮して設計する。

組織形態

ヒエラルキー型組織

ヒエラルキー型組織は、機能型組織と事業部制組織に分けられる。

ヒエラルキー型組織

マトリクス型組織

機能別組織と事業部制組織を組み合わせて、それぞれの長所を発揮させようとしたものが、マトリクス型組織である。うまく機能すると、情報伝達が円滑になり、1人が2つの役割を同時に効果的に果たせる。一方で、構成員は通常2人のボスを持つため、権限・責任が曖昧かつ流動的になり、指揮命令系統の混乱し、業務に支障が生じる恐れがある。

人員配置

人員配置とは、企業の戦略を遂行するために必要な人員構成を実現することで、不足分を埋める調達(外部調達・内部調達)と余剰分を解消する代謝(解雇・希望退職)の2種類の方法がある。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、最適な人員配置を行う必要がある。その際に、短期的視点に加えて、中長期的視点も持つことを忘れてはならない。また、組織内で高評価な人材を特定部署に重点的に配置すれば、「戦略上、重視されている」というメッセージになり、その部門のメンバーのモチベーションは高まる。

外部調達と内部調達の違い

外部調達と内部調達は、人材調達のコスト・人材評価の精度・組織構成員に与える影響等の点で異なる。

外部調達と内部調達の違い

報奨

報奨は、インセンティブの1つで、従業員に対する企業への貢献の対価である。その設計時には、経済合理性や評価との整合性を考慮しなければならない。また、従業員のモチベーションを高めるためには、公平で誰もが納得できるような評価方法を用いることが不可欠である。次の3つの基本的な要素に分けて考えると分かりやすい。

報奨の基本要素

報奨項目の種類

代表的な報奨項目には、次のようなものがある。

報奨項目の種類

評価

企業は従業員の能力・成果を測定し評価するが、その目的は情報収集とコミュニケーションにある。

評価の目的

評価方法

評価方法は、「何を(評価項目)」、「誰が(評価者)」、「どのくらいの期間(評価期間)で」評価するかを考えて設計する必要がある。

評価方法

企業がよく活用している代表的な評価手法に、MBO(目標管理)があり、次の手順で行う。まず、従業員はマネジャーと共に組織目標とすり合わせながら、納得と合意のもとに自身の当期目標を主体的に決定する。そして、従業員は自己管理しながら目標達成を目指し、マネジャーはそのための支援と協力を行う。評価期間の終わりに、マネジャーはその妥当性をチェックし、フィードバックする。そして、互いに納得できる結論をもって最終評価とする。

評価に関する留意事項

どれほど精緻な評価システムでも、人間が運用するため、評価の誤差・偏りは生じる。その原因を完全に取り除けないが、評価者が陥りがちな傾向を認識することで、誤差・偏りを減らせる。とくに次の点に気を付けたい。

評価に関する留意事項

能力開発

能力開発は、企業の戦略を遂行するために必要な人員構成を実現することが目的である。短期的には現在の、中長期的には将来就く可能性のあるポジションで、それぞれ求められる能力要件を満たすために行う。これは「コスト」ではなく、人に対する「戦略的投資」として捉えることが重要である。こうした視点を持ち、持続的に好調な業績を上げている企業には、次のような特徴が見られる。

業績が持続的に好調な企業の特徴

企業の競争力が左右される今日、これらの特徴は全ての企業が留意すべき視点である。企業が行う能力開発には、業務を行いながら業務知識や仕事のやり方を身に付けていく「OJT(On-the-Job Training)」と、業務時間外に業務知識等を学ぶ「Off-JT(Off-the-Job Training)」がある。これまで多くの日本企業ではOJTが中心であったが、Off-JTも有効活用していく必要がある。

ビジネスにおける能力

グロービスは、現代のビジネスリーダーが備えるべき能力要件として、次のものを挙げている。

グロービス・ビジネスリーダー・モデル

これらの要件に影響を与えるのが、意志・意欲・価値観・信念等全ての行動及び思考の根幹を成す意識や心理的要因である。個人の能力はこれらによって総合的に表される。

キャリア開発

キャリアとは、人員配置により形成される業務経験のつながりである。企業が従業員のキャリア開発を行う目的は、異なる領域や高難易度の業務経験を積ませて従業員の能力を高め、組織の成果を最大化することにある。従業員は自らのキャリアについて、「エンプロイアビリティ(雇用されうるだけの能力)」があるかを常に問い続け、戦略的にキャリア・デザインを考えなくてはならない。

これからのマネジメント

企業の存在価値は、社会に対して新しい価値を継続的に生み出すことにあるが、変化が速く予測しにくい環境下では難しい。こうした中で、企業が存続していくためには、変化に対応し、自らを変革することが求められる。

企業変革

企業変革とは、新しい環境に適応するために組織を変化させることである。一般には、過去の成功にとらわれて変化から取り残された組織の刷新を指すことが多い。しかし、環境が大きく変化する今日では、「自己変革型組織」になることが、その最終ゴールとなる。

企業変革の方法とプロセス

組織変革は、経営陣がメッセージを発するだけでは不十分で、HRMの具体的な仕組みとOBの個々の取り組みを駆使し、人・組織の行動に影響を与え、実現していかなければならない。変革は一足飛びに実現できるものではなく、社会心理学者のクルト・レビンは、次の3つの段階にまとめている。

レビンの変革プロセス

変革に対する抵抗と対処

変革の実行は、「慣性の法則」が働くため、大きな困難を伴う。組織も個人も従来の行動パターンで動こうとし、変化に対して様々な抵抗を示す。この抵抗を克服するためには、その原因を突き止める必要がある。そして、直接的な強制力を働かせることを含めて、状況に応じた対策を講じる。

組織学習

変革の力を内在化させた組織を概念化したものに、「学習する組織」がある。過去の組織文化や戦略の枠に思考・行動を縛られずに変化に対応し、自己改革機能を備える特徴を持つ。ここでいう「学習」とは、単に知識を習得するだけではなく、思考・行動のパターンを変えていくことを指す。その組織を実現するための要素として、「ダブルループ・ラーニング」と「5つのディシプリン」がある。

伝統的な組織と学習する組織の比較

ダブルループ・ラーニング

ハーバード大学ビジネススクールのクリス・アージリスは、組織における学習プロセスは、「シングルループ・ラーニング」と「ダブルループ・ラーニング」の2形態があるとした。「シングルループ・ラーニング」は、問題に対して既存の目標達成に向けて軌道修正を行うことを言い、「ダブルループ・ラーニング」は、問題に対して、既存の目的や前提そのものを疑い、それらも含めて軌道修正を行うことを言う。学習する組織を実現するためには、「ダブルループ・ラーニング」の考え方が不可欠である。

5つのディシプリン

マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲは、「学習する組織」の実現のために必要な要素として「5つのディシプリン(構成要素)」を挙げた。

5つのディシプリン

中でも、「システム思考」要素が他の4つを束ねるものと位置付けている。センゲは、組織がこれら5つのディシプリンを同時に獲得することで、変化への事故対応力を備えることができると考えた。

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作者

Hiroki Sugawara

投稿日

2026-02-23

更新日

2026-02-23

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