グロービスMBA 第二部 マーケティング 要約 中編
今回は、書籍「グロービスMBAマネジメント・ブック」第二部「マーケティング」の要約となる中編記事をお届けします。
製品とブランド
製品の構成要素
製品は、その構成要素を、コア・形態・付随機能の3つに分解できる。
マーケティング戦略上、どれが最重要となるかは、製品特性や競争環境により異なる。
また、導入期にはコアや形態で差別化が可能でも、市場が発達して競合類似製品が出回ると、付随機能での差別化が重要になる。
そのため、リサーチ等により顧客が重要視している要素を見極めなければならない。
製品の分類
顧客の製品への関心の持ち方・買い方・KBFは、製品の性質で異なる。そのため、製品の特徴により複数のカテゴリーに分けて把握すると、効果的なマーケティング戦略策定への早道になる。実務で頻出する製品の分類は、以下の切り口で分けたものである。
ブランド
ブランドとは、「競合相手や製品・サービスとの違いを明確にするために用いられる名前・言葉・デザイン・シンボル、または、それらを組み合わせたもの」で、差別化の核となる。特に、製品に大差が無い場合や、差別化に多くの時間やコストを要する場合等は、ブランドが大きな武器となる。
強いブランドの効果
強いブランドを育て、ブランド・ロイヤルティを高めることは、重要な戦略課題である。ブランドの価値は、一朝一夕に高めることはできず、地道な努力の積み重ねが必要になる。
強いブランドを持った企業は、次のような効果を得られる。
ブランド展開と体系
ブランドの展開にはいくつかの方法がある。ブランド展開を検討する際は、ターゲット顧客・製品とブランドイメージとの整合性、マーケティングコスト・自社製品間のポジショニング・シナジー・リスク等を十分に考慮しなくてはならない。
製品の開発とライフサイクル
新製品開発
新製品開発プロセスは、製品コンセプトの開発・戦略仮説の検討・製品化・市場参入という4つの段階に大別できる。
ニーズ発想とシーズ発想
新製品のアプローチには、ニーズ型開発とシーズ型開発の2つがある。前者は「とあるニーズを解決する方法は無いか?」という発想から開発を始めるのに対し、後者は「開発した新技術を何かに利用できないか?」という発想で取り組む。
新製品や新規事業の成功には、顧客ニーズを無視できない。そのため、ニーズ発想の重要性が強調されがちだが、新市場創造等の場合は最初から明確なニーズがあるとは限らず、シーズ発想によるアイディア開発が有効な場合も多い。また、ニーズを発見しても技術的解決できなければ、新製品は完成しない。
現実の製品開発過程では、状況に応じてそれらを両立させ、合致させることが望ましい。
製品ライフサイクル
新製品の売上は、事業ライフサイクルの場合と同様に、時間推移でS字型カーブを一般的に描く。
導入期・成長期・成熟期・衰退期の各段階では、製品を受容する顧客タイプ・製品と利用方法に対する顧客理解度・競争環境等が違うため、マーケティング課題も異なる。
時間推移と顧客タイプ
市場の発達段階により顧客タイプが異なるのは、新製品の受容において、顧客の性格や価値観が反映されるからである。社会学者のE.M.ロジャースは、顧客が新製品をどれだけ早く買ったかに注目して、「イノベーター(改革者)」「アーリー・アダプター(初期採用者)」「フォロワー(初期大衆)」「レイト・フォロワー(後期大衆)」「ラガード(採用遅滞者)」の5つに分類した。
各段階における課題
導入期は、製品の本質的機能を認知させることが課題で、クチコミの威力を発揮するアーリー・アダプターを、いかに取り込むかが鍵となる。
成長期は、市場浸透が課題となり、潜在顧客を取り込むための製品ライン拡大や、参入企業との差別化を図る必要性が出てくる。
成熟期は、競争が激化するため、ブランド・ロイヤルティを高めてリピート客を増やす等で、シェアを維持することが課題となる。
衰退期では、売上が低下して利益も生じなくなるため、新たな価値創造を行うか、撤退するか意思決定を行わなければならない。新たな価値創造を目指す場合は、市場ニーズを見直すことから始める。
プロダクト・エクステンション
全ての製品が同じように導入期・成長期・成熟期・衰退期というプロセスを辿るとは限らないことに注意すべきである。例えば、最初は爆発的に売れても一過性のブームに過ぎず、導入後すぐに衰退期を迎えることもある。逆に、何十年経っても人気の衰えない定番商品もある。
定番商品が長い成熟期を維持しているのは、時代の変化に応じてマーケティング戦略を見直して修正する「プロダクト・エクステンション」が、継続的に行われているからである。
プロダクト・エクステンションには、主に以下3つの手法がある。
戦略的価格設定
価格の意味と機能
価格は、企業が得るキャッシュに直結し、収益を直接的に規定する要因である。また、製品の価値レベルを、最もダイレクトに分かりやすい共通の尺度で、消費者に訴えられるメッセージ手段でもある。
加えて、競合企業に対するシグナルの役目も果たす。競合企業を無視した価格にすることはできず、自社の価格も競合企業の価格戦略に影響を与える。
需要供給曲線
需要と供給の関係は、当然ながら価格に大きな影響を与える。特に、差別化が難しい最寄品の場合、古典的需要供給曲線で価格帯がある程度決まることが多い。
供給者としては高価格に設定したいが、そうすると通常は需要減少を招く。これに対し、独占的な製品を持つ売り手は、供給量を調整して高価格を維持できる。しかしながら、顧客から反発を買わない程度にしなければ、将来競合が出てきた時に、そっぽを向かれる恐れがある。したがって、高価格設定が可能な場合でも、顧客との長期的関係等を考慮して価格を検討しなければならない。
価格弾力性
製品の価格を変化させた時に、需要量が大きく変わるものと、ほとんど変わらないものがある。価格変化の度合に対する需要変化の度合の比率を示す指標を「価格弾力性」と言う。
価格弾力性が小さい場合、価格変更に対して需要変化はほぼないが、価格弾力性が大きい場合、価格変更に対して需要変化が大きい。生活必需品は価格弾力性が小さく、高価な贅沢品は価格弾力性が大きいと言われる。
価格弾力性は、顧客セグメントによって多様であり、同じ顧客セグメントであっても状況と共に変化する可能性がある。また、その製品のスイッチング・コストにも影響を受ける。
価格と収益性
価格が収益に与える影響は非常に大きく、戦略的な価格を設定しなければならない。収益構造を改善する場合、通常はコスト削減または売上増大を目指す。その中でも価格は、業績に対する改善感度が最も高く、数%の価格上昇で、数十%収益性が向上すると言われる。
日本の優良企業100社を対象に、営業利益改善度の調査と分析を行った図が、下記となる。
価格設定に影響を与える要素
価格に影響を及ぼす要因には様々なものがあるが、価格設定の際は、「コスト」「カスタマー・バリュー」「競争環境」の3つを特に注意したい。
(1) コスト
コストは、基本的に固定費と変動費で構成されている。固定費率が高いと、損益分岐点を超えるまでは赤字だが、それ以降は売上増加分のほとんどが利益となる。一方で、変動費率が高い場合、製品1つ当たりの限界利益の最大化が目標となる。
(2) カスタマー・バリュー
カスタマー・バリューを決定することは難しく、リサーチ力などマーケターのスキルが問われる。企業は、顧客に対して、製品試用や製品特性を正確に伝達する等して働きかけを行う。セグメントごとに製品の価値は異なるため、最大限の利益を得られる価格を発見することも大切である。
(3) 競争環境
自社の都合だけで価格設定できず、競合の価格やその動向に影響を受ける場合がある。差別化できない商品では、1社の動向に他社も追従せざるを得ない。競争環境の影響を避けるには、機能・デザイン・ブランド・サービス等の面で明確な差別化が求められる。
価格設定手法
価格設定手法には、コスト、カスタマー・バリュー(需要)、競争環境のいずれかを重視する一般的なものと、それ以外の要素や要因を重視するものの2つに大別される。
価格設定を行う際に、業界地位の制約を受けることもある。
リーダー企業は、競合を徹底的に潰す見込みであえて行う場合を除き、通常は市場規模を縮小させないように、自ら価格競争を仕掛けない。一方、2位以下の企業は、リーダーに追随するか、差別化して追随しないか、いずれかの選択を迫られる。
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