
30kmの移動で169円!?西武鉄道で大回り乗車の旅
関東私鉄の中でも数少ない、最安の切符で長い距離を稼ぐ「大回り乗車」が可能な西武鉄道の各路線を活用した、旅の実体験の記録をご紹介します。
はじめに
私は、電車に乗って手持ち無沙汰になると、ドアの上にある路線図を眺めて時間潰しをしています。とある日、乗車した西武鉄道の電車の中、迷路のようで複雑な路線図を何気なく見ていました。その時に、大回り乗車できるのではないのかと気付いたことが、この記事を執筆するきっかけとなりました。
大回り乗車について
大回り乗車とは、JRでの運賃計算の特例「出発地から到着地への経路で、同じ駅を2回以上通過しない、かつ、改札の外にでない限りは、最短経路の移動として取り扱う」を利用して、最も安い切符を使って長い距離を移動することです。
例えば、山手線で新宿駅から隣駅の代々木駅に行く場合を考えてみましょう。通常の乗り方では、内回り(渋谷・品川方面行き)電車を使います。一方で、大回り乗車だと、外回り(池袋・上野方面行き)電車を使います。この他にもルートはありますが、大回り乗車にならないものもあります。それは、新宿駅から中央線経由で東京駅に至り、外回り(品川・渋谷方面行き)の山手線に乗り換えて代々木駅に向かう経路です。なぜなら、代々木駅を中央線と山手線で2回通過してしまうからです。
西武線でできるのか?
では、西武線はどうなのでしょうか。西武鉄道の旅客営業規則を公式ホームページから調べたところ、JRと同様の大回り乗車ができます。以下に引用した該当区間は、利用者側がどの経路を通ったかを西武鉄道側が認知できないので、このような規則はやはり存在しました。しかも、「経路の指定を行わない」とのことなので、同じ駅を2回通過しても問題なさそうな記述にも読めます。とはいえ、無用なトラブルを避けるためにも、JRと同じルールで乗車した方が良さそうです。

大回り乗車の旅
ということで、旅客営業規則第70条の対象となる全駅を通過する小平駅発小川駅着の最長一筆書きルートで、大回り乗車の旅をしてみました。乗車した路線の順番は、新宿線(小平~所沢)、池袋線(所沢~西所沢)、狭山線(西所沢~西武球場前)、山口線(西武球場前~多摩湖)、多摩湖線(多摩湖~国分寺)、国分寺線(国分寺~小川)の6つになります。
新宿線
小平駅にて
大回り乗車の旅始まりの駅「小平」に到着。商業施設やバスロータリーがある南口から撮影を試みた。待てども待てども人の流れが丁度良く途切れず、敢え無く断念。
さて、どうしようか。本川越行各駅停車の乗車には間に合わせたいし、駅舎の写真もしっかりと撮りたい。ならば、北口側から撮影しよう。そう考えて、反対側に急いで回り込む。撮影に良さそうな場所に迷わず歩を進め、振り返って悩む間もなくシャッターを切る。
こうしている間にも出発まであと3分を切っている。内心は駆け足で改札をくぐり、ホームに止まっている当該列車に乗り込んだ。しかし、定刻を過ぎているのに出発しない。何事かと思っていると、乗り継ぎ連絡予定の拝島線の列車が遅れているため、出発を遅らせる旨の車内アナウンスが流れる。スタートから早くも幸先が悪い状況になった。

小平~東村山~所沢
それから2、3分ほど遅れて到着した拝島線の列車とほぼ同時に出発。並走しながら、次の駅に向かって普段よりも力強く速度を上げていく。まるで競走しているようで、少し高揚した。
そのまま車窓を眺めていると、レールの下が茶色い鉄粉を塗されたバラストから真っ白なコンクリートに変わる。はて、どうしてだろう。ああ、次の停車駅は、東村山か。ここは、連続立体高架化工事中だったな。そう考えている最中にも、列車は高度を少しずつ上げて行き、新しいホームへと滑り込む。
この駅では、後続の特急列車を待つことになった。それは丁度良い。高架駅になってからは、今回が始めての往訪だったのだ。少ない待ち時間を目一杯使い、列車の中からジロジロと周りを見渡す。運転席の後ろを陣取っている人が多かったが、彼らは前面展望に齧り付きたかったという訳か。
特急列車をやり過ごした後、ほどなくして出発し、何事もなく所沢に到着。西武池袋線に乗り換えしなければならないので、本川越へ行く西武新宿線の列車とはここでお別れだ。
池袋線・狭山線・山口線
所沢~西所沢
このタイミングで問題が発覚。発車案内板のLEDの文字がまともに映らないフリッカーだ。記事執筆用の行動ログのために撮影して分かった。スマートフォンを含めデジタルのカメラと、発車案内板は相性が悪い。頭の中からすっかり抜け落ちていた。
準備不足で企画終了の危機か。強く悔みながら、iPhone でフリッカー発生を抑制できるアプリを慌てて探す。目的を達成できそうなカメラアプリを何とか見つけ出し、インストール。
インストールしたアプリの調整中、次の列車が近づいてくる。地下鉄からの直通運転と思われる、東京メトロ17000系電車だ。吸い込まれるように乗り込み、引き続き調整に苦心している間に、列車は隣駅の西所沢へと至る。狭山線に乗り換えるので、忘れずに下車。アプリの調整も問題ないはずだ。
西所沢~西武球場前
目的地がおそらく同じであろう人たちの流れに従い、同じホームの隣の番線に移動。5分ほど待つと、西武球場方面から西所沢行の8両編成がやってきた。行先を見れば、西武球場前ではない。どういうことだ。困惑していると、停車後に行先が西武球場前へと変わる。なるほど、折り返し運用か。西武新宿駅では行先表示を変更済みの状態で列車がやってくるので、同じ運用だろうと思い込んでいた。
それから新たな乗客が現れることもなく、列車は多くの空席を残して定刻で出発。唯一の途中駅である下山口でも乗降がほとんどないまま、終点の西武球場前へ。
空気輸送すぎて将来が不安だな。そう思いながら降り立つと、臨時ホームにも列車がずらりと止まっている。今日はイベント開催日だったようだ。嬉しい想定外に浮足立ちながら、邪魔にならないすみっこまで移動。電光掲示板も含めて記念に撮影した。

西武球場前~多摩湖
ホームに向かう途中、高価なカメラを持った人たちが見えた。西武鉄道から先日、旧型車を新型車へ置き換えることが公表されたので、最後の雄姿を納めに来た撮り鉄の方々だろう。
そして、ホームで乗客を待っていたのは、8500系電車のトップナンバー。トラブルから始まった旅だったけれども、これは僥倖だ。ウキウキしながら乗ってみたものの、座り心地は最悪である。正直に言って、ゲームセンターにある乗り物レベルの硬い座席で、立って乗ったほうが楽かもしれない。
西武球場前を出発すると、すぐに大きなカーブに沿って進路を変える。曲がり終わった直後に見える車庫の中には、新型のL00系電車が留置されていた。新車は座り心地の良い座席を期待したい。
そう思わせる程の窮屈さに不満を感じながらも、線路脇でカメラを構える撮り鉄を時折横目に、列車は西武園ゆうえんちを経て多摩湖へと進んでいった。
多摩湖線・国分寺線
多摩湖~国分寺
多摩湖駅でトイレ休憩をしていると、国分寺行列車の出発時間ギリギリになってしまい、滑り込みで乗車。多摩湖線は、住宅地の中を縫って走る路線のため、車窓から見える風景で目新しいものは特にない。すぐに手持無沙汰になってしまった。車内に目を向けると、狭山線と同様に空席が目立つ。山口線が普通鉄道路線なら、西所沢から国分寺まで直通運転できて、座席も埋まりやすくなるだろうな。あり得ない妄想を垂れ流しながら、終点まで6駅分、少なくない時間を潰す。
国分寺駅では、多摩湖線の頭端式ホームに繋がっている長めの連絡通路を歩き、階段を下りて国分寺線のホームに出る。実はどちらの路線のホームも地表にある。そのため、乗り換えで階段を介するのは、なんとも不思議な気分になる。

国分寺~小川
列車は国分寺を出発し、恋ヶ窪、鷹の台を辿り、小川に到着する。終点の東村山へと向かう電車と別れて改札を出たら、この旅ももうすぐ終わりだ。西口と東口のどちらから撮影するか。数秒悩み、西口に向かう。撮影した結果、真横が工事中で余りにも殺風景で、使えないと判断。東口に回り込んで撮影し直す。人気が多くて撮影に苦労した小平駅に比べると、小川駅は真逆だったのが印象的だった。ホームには人が沢山いたので、乗降よりも乗り換えの需要の方が大きいのかもしれない。

おわりに
大回り乗車の旅の醍醐味は、最も安い切符で乗れる区間を可能な限り長くすることです。裏を返せば、すぐに辿り着ける目的地に、敢えて遠回りして向かうことでもあります。そのため、乗り物に長時間乗り続けることが苦ではない(もしくは、好きな)人ではないと、やりきれないでしょう。
この記事で紹介したルートと反対になる、小川駅発小平駅着の旅程でも同じことができますが、前半で精神力を使い切る可能性があります。西武線で一筆書きを試してみたい方は、以下の路線図と旅程表を参考に工程を組むことをオススメします。
路線図と旅程表

| 路線 | 乗車区間 | 発車時刻 | 行先・編成 |
|---|---|---|---|
| 西武新宿線(青色) | 小平ー所沢 | 13:49 | 本川越行8両 |
| 西武池袋線(橙色) | 所沢ー西所沢 | 14:10 | 小手指行10両 |
| 西武狭山線(橙色) | 西所沢ー西武球場前 | 14:24 | 西武球場前行8両 |
| 西武山口線(赤色) | 西武球場前ー多摩湖 | 14:43 | 多摩湖行4両(※臨時) |
| 西武多摩湖線(黄色) | 多摩湖ー国分寺 | 14:54 | 国分寺行4両 |
| 西武国分寺線(緑色) | 国分寺ー小川 | 15:23 | 東村山行6両 |
関連リンク
30kmの移動で169円!?西武鉄道で大回り乗車の旅
https://blog.chaotic-notes.com/articles/journal-detour-ride-trip-on-seibu-railway/



