グロービスMBA 第五部 人・組織 要約 前編

グロービスMBA 第五部 人・組織 要約 前編

今回は、書籍「グロービスMBAマネジメント・ブック」第五部「人・組織」の要約となる前編記事をお届けします。

企業経営と人・組織

企業の代表的な経営資源は、「ヒト」「モノ」「カネ」である。かつては、「モノ」と「カネ」に重きが置かれることが多かったが、最近では、「ヒト」が重要視されている。
それは次の2つの理由が考えられる。一つは、企業が環境変化に迅速かつ的確に対応するためであり、もう一つは、競争優位の源泉が知識・知恵にシフトしているからである。
人・組織のマネジメントは「合理的に捉えられないもの」と思われがちだが、実際には論理立てて考えられる部分も多い。これを苦手とする企業やマネジャーが多いだけに、適切な方法や考え方を身につけられれば、企業の競争力を高められる。

経営資源としての人の特徴

人・組織のマネジメントを習得するには、まず「人」の特徴や行動について理解する必要がある。具体的には、以下のポイントを認識する。

経営資源としての人の特徴

影響を及ぼす要因

自分の価値観や目的が、所属している組織のものと合致したり共感できる部分が大きかったりする場合に、人は働きがいを感じる。そのため、経営理念やビジョンを実現するための経営戦略と、それを支援する人・組織のマネジメントが必要となる。このとき、これらにおいて整合性をとることが重要である。

人・組織のマネジメントに影響を及ぼす要因

外部環境要因

人・組織のマネジメントを考える際には、経営戦略との整合性を図る意味でも、外部環境をまず把握する必要がある。その中でも、下記の要因は、特に大きな影響を与える。

外部環境要因

組織行動学と人的資源管理

人・組織のマネジメントは、社会学や心理学等から導き出された「人の行動メカニズム」に基づき、「組織行動学(OB:Organizational Behavior)」と「人的資源管理(HRM:Human Resource Management)」に分けて考えられ、以下のように人や組織に働きかける際に用いる方法が異なる。

組織行動学と人的資源管理

「ヒト」と、ヒトの持つ「知識」や「知恵」の重要性が増している今日、人事以外の機能を担う部門のマネジャーもこれらを理解しなければいけない。

組織行動学の視点

OBでは、「個人」「集団(目的を持った個人の集合)」「組織(目的を持った集団の集合)」により人の行動が異なること、人・組織に働きかける時に、状況を「認識」し、他者や組織に与える影響を十分に考慮して「行動」する必要があること、これら2つの側面で考える必要がある。

人的資源管理の視点

HRMは、次の4つの要素で構成され、その施策を立案・評価する際の考え方の枠組みとなる。

人的資源管理

リーダーシップとマネジメント

ハーバード・ビジネススクールのJ.コッター教授は、経営陣やマネジャーに求められる機能を「リーダーシップ」と「マネジメント」に分けた。それぞれの機能を果たすためには3段階のステップを経る。

リーダーシップとマネジメント

必要性

経営者やマネジャーは、リーダーシップとマネジメントの両方の能力を兼ね備えていることが求められる。しかし、現在では、個々の従業員も両方の能力を身に付ける必要がある。

経営管理者に要求される能力

エンパワーメント

エンパワーメント(Empowerment)の意味は「力を与えること」である。通常は「権限移譲」と訳されるが、ビジネスで用いる時は「与えられた業務目標を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する『力』を与えること」と定義できる。

エンパワーメントの成功要件

組織が目指している目標を実現するために、構成員の自律性を促すだけではなく、統一性や一貫性を失わないように、その行動をある程度制御しなくてはならない。また、部下の能力を見極め、適切な業務を設定することも大切である。このように、エンパワーメントの技術は簡単ではないため、これらの絶妙なバランスを取るには、以下の3点に注意したい。

エンパワーメントの成功要件

パワー

ステークホルダーの多様性や相互依存関係は、新しいアイディアを生み出す創造的思考を促す際に有効だが、同時に利益配分等を巡る対立も生みやすい。そこで、対立を最小限にして好ましい成果を引き出せるように、多様なステークホルダーに影響を与える「パワー(人や組織の行動に影響を与える力)」を、いかに活用するかが課題となる。

パワーの源泉

パワーを有効活用するために、人や組織の行動に影響を及ぼすその源泉を理解する必要がある。米国の社会心理学者であるジョン・フレンチとバートラム・ラーベンによると、次の5つで構成される。

パワーの源泉

影響力を行使する側が多様なパワーの源泉を持っていると、より効果的に人の行動に影響を与えられる。戦略目標の実現には、必ずしも1人で全ての源泉を兼ね備える必要はなく、様々な源泉を持つ人々で相互補完すればよい。

個人と集団の行動

モチベーションとインセンティブ

他の経営資源と異なり、人の貢献度合は、仕事に対して持っている何らかのモチベーションに左右される。モチベーションは、個人の置かれた環境や内発的な欲求によって形成される。何を重視するかは、個人差があるが、企業は間接的に影響を与えられる。

組織が与えるインセンティブ

モチベーションを高めるものをインセンティブと言う。代表的なものとして、金銭的報酬、社会的評価、自己実現の場の提供等がある。金銭的報酬は、具体的・定量的で分かりやすいので、組織においてよく用いられる。社会的評価は、地位・権限、名誉等を指す。自己実現の場とは、自分の理想像に近づくための機会・環境を指す。

組織が与えるインセンティブ

モチベーション理論

モチベーションを理解するには、人の欲求やモチベーションに関する理論が役に立つ。代表的な理論は次の3つである。

モチベーション理論

集団のメカニズム

ある特定の目的を達成するために形成された複数の個人の集まりを「集団」と呼ぶ。組織目標を持っている企業は、大きな集団と言える。集団における個人の行動は、そうでないときの行動と異なる特徴がある。目標達成に対して、良い結果も望ましくない結果も、もたらすことがある。

集団をとらえる視点

集団の構造を把握し、成果を高めるために考慮すべき概念には以下のものがある。

集団をとらえる視点

集団における意思決定

集団における意思決定は、多様な意見や情報を収集でき、決定内容がより多くの人に受け入れやすいため、一般的に個人で行うより優れている。一方で、凝集性の高い集団・外部と隔絶している・支配的なリーダーが存在するといった場合に、物事を多様な視点から批判的に評価する能力が欠落する「グループシンク」という傾向が発生する。これを避けるために、異なる意見を十分に受け入れ、建設的な批判を重視し、選択肢の分析に時間をかける等の配慮が必要である。

集団の種類

企業には、組織によって職務や役割が明確に定められることで形成する公式集団(フォーマル・グループ)と、個人的な人間関係に基づいて自然発生的に形成される非公式集団(インフォーマル・グループ)が存在する。共通の利害や関心が存在する、非公式集団における人間関係や交流は、公式集団における行動や業績に影響を及ぼす。

チーム・マネジメント

高い成果を上げるチームをつくるには、「構成員の組み合わせ」と「凝集性」が重要である。
多様な能力を持つ構成員で編成されたチームは、技術的な専門知識・問題解決や意思決定・対人関係という3つの重要なスキルが十分に発揮されるため、より大きな成果を生み出せる。
チームの凝集性が高いことも、共通の目標や価値観を持ち、達成のために一丸となって取り組むため、より高い成果につながる可能性がある。

集団とチーム

チームは、構成員の責任範囲と成果において、集団の一形態であるが、通常のものとは異なる特徴を持つ。集団の構成員は、自分の責任範囲内で業務を遂行するため、その成果は業務達成能力の総和以上にはならない。対して、チームの構成員は、自分の業務遂行だけでなく、チーム全体の活動を最大化させるための活動を行うため、その成果は業務達成能力の総和よりも大きくなる。このプラスアルファの成果の有無が、集団とチームの最大の違いである。

集団の発展段階

集団の特徴をその形成プロセスに沿って捉えていくと、新たにチームを結成して発展させていく際に役立つ。集団の発展は5つの段階に分けられる。

集団の発展段階

コミュニケーション

コミュニケーションとは、送り手と受け手の間でメッセージを伝達し、その意味を共有することである。円滑なコミュニケーションは、迅速な意思決定や問題解決につながる。

コミュニケーション・プロセス

コミュニケーションは、次の4つのプロセスを経る。

コミュニケーション・プロセス

コミュニケーションの落とし穴

コミュニケーションの阻害要因を理解すると、効果的に行うときに役立つ。コミュニケーションが上手く行かない原因として次の3つの問題が考えられる。

コミュニケーションの落とし穴

コンフリクト

コンフリクト(対立、軋轢)とは、相反する意見・態度・要求等が存在し、互いに譲らないことで緊張状態が生じることを言う。人間関係においてコンフリクトは避けられない。マイナス面ばかりに目が行きがちだが、マネジメント次第で、組織の成果を高めるドライバーとなる。コンフリクトは常に顕在化しているとは限らないため、潜在的なものが存在する可能性も考慮する必要がある。

コンフリクトのマネジメント

ハーバード大学ビジネススクールのジェームズ・ウェアとルイス・バーンは、個人間のコンフリクトに対処するには、状況をまず理解し、そのものを変えるか、当事者の態度や対応を変える必要があるとしている。その具体的な方法として、交渉制御(建設的)対峙を挙げている。また、コンフリクトを理解するための視点として、以下の4点にまとめている。

コンフリクトのマネジメント

関連記事

マネジメント・ブック要約

前の部

作者

Hiroki Sugawara

投稿日

2026-01-19

更新日

2026-01-19

ライセンス