
グロービスMBA 第三部 アカウンティング 要約 後編
今回は、書籍「グロービスMBAマネジメント・ブック」第三部「アカウンティング」の要約となる後編記事をお届けします。
株式市場が評価する指標
投資家が注目する指標
投資家が株式投資するときの判断材料は多様である。定性的判断で株式投資が行われることが多いが、比較的よく見る指標もある。経営者は、投資家が注目する指標を理解し、投資家に評価してもらえるような企業経営を心がけなければならない。代表的な指標としては以下のものがある。
たな卸資産
評価方法
販売されたたな卸資産の単価計算には代表的な方法が3つある。同種類の資産でも調達時期で仕入価格は異なるため、販売された資産をいつ仕入れたものかと認識するかで、同じ売上高でも会計上の利益額は異なる。それにより、期末において貸借対照表上のたな卸資産の金額が異なる。
先入先出法
たな卸資産に加えた古い順に販売すると仮定し、結果的に在庫が新しく取得・製造した製品となる方法。物価上昇で製造コストも販売単価も上昇している時期には、利益が大きく計上されることが多い。
後入先出法
最新の仕入在庫から順に販売すると仮定した方法で、売上総利益は常に最新状況を示し、会計上の利益は小さくなることが多い。逆に、貸借対照表上のたな卸資産は昔の簿価で計上されるため、これが積み重なると在庫金額は現在の状況を反映しているとは言い難くなる。
平均法
個別の仕入原価に注目せず、1期間の期首在庫を含めた総仕入金額と総仕入数量からその期の平均単価を算出し、その期中に販売された全製品についてその価格を原価とする総平均法と、仕入れの度に平均単価を算出し直し、払出原価を計算する移動平均法がある。
評価基準
たな卸資産は、同一品でも時間経過で価値が変動することを認識しなければならない。
原価法
たな卸資産を取得原価で評価する方法。ただし、時価が取得原価より著しく下落した場合、回復見込みがある場合を除き、強制的に時価を評価額としなければならない(強制低価法)。
低価法
時価と原価を比較していずれか低い方の価格で評価する方法であり、価値を堅く見積もる保守主義に基づく。日本では、2008年4月からは「たな卸資産の評価に関する会計基準」が適用され、トレーディング目的以外の評価基準は低価法が義務付けられた。
減価償却と固定資産
減価償却
減価償却は、時間経過で使用価値が減少する機械や建物等の有形固定資産に対し、耐用年数に渡り費用処理を行うことである。その価値減少分が減価償却費であり、徐々に取得原価から差し引き、最終的に所定の残存価格が残るように償却する。ただし、有形固定資産の中でも使用価値が減少しないと考えられる土地等は、対象とならない。
減価償却は費用として認識されるが、キャッシュの流出は資産購入時点であり、多額の減価償却を計上している企業であっても、実際のキャッシュフローは潤沢なことが多いので注意すべきである。
無形固定資産も償却しなければならず、特許権・借地権・商標権等の法律上の権利である資産は、前述の有形固定資産の減価償却と同様の処理を行う。ただし、一般には定額法によって残存価値ゼロで償却され、耐用年数も法定有効期限内が望ましい。
会計管理
損益分岐点分析
企業を取り巻く環境が急変する状況では、売上高の変化に柔軟に対応できる体制が求められる。そのための判断指標の1つとして損益分岐点分析がある。この分析を行うことは、単に個別事業の採算性を分析するだけではなく、各事業別の業績評価を明確に行うことにもつながり、管理上必要不可欠である。
損益分岐点比率は不測の事態に備える安全率を意味し、低いほど経営が安定している。超優良企業では70%、優良企業では80%と言われる。
原価計算
原価計算とは、製品・部門・顧客等の対象別に原価(コスト)を測定することである。
会計制度上は「全部原価計算」を用いる。この計算では、変動費・固定費という区別にこだわらず、原価に固定費も含む。生産量増加で製品単位当たり原価が下がる傾向があり、売上増減と利益増減は比例しなくなる。対して、「直接原価計算」は変動費と固定費を明確に区別し、変動費のみ製造原価とする。工場の操業度に関わらず発生する期間原価は間接費の固定費分として処理されるため、製品単位当たり原価が一定となり、売上高に応じた利益額を明瞭に示せる。
Activity-Based Costing
企業の取扱製品の増加、Factory Automation化、社会全体のソフト化が進展した結果、製品原価の中で、直接的な材料費・労務費の比率が低下した一方で、製造間接費の比重が高まった。製品原価以外でも、製品種類や販売チャネル多様化に対応して、管理・ノウハウ・物流等に関わる間接費の比重が増えている。そのため、大雑把に配賦する従来の原価計算は、正確な原価(コスト)が把握できない問題が生じている。そうした事態を解決するために、活動基準原価計算(ABC: Activity-Based Costing)が考案された。ABCは、間接費の配賦方法は製品やサービスを構成する活動にまで立ち入って調べるべきという考え方である。原価発生要因であるコスト・ドライバーとして「活動」に焦点を当てて考える特徴をもつ。
マネジメント・コントロール
経営管理には、経営者主体で全体的観点から経営戦略を策定するステップと、様々な職能分野を担当現場管理者が行う日常のオペレーション管理の2つのステップがある。マネジメント・コントロールとは、この2つのステップの橋渡しを行い、全体としての組織活動に秩序を与えることである。
責任管理単位
財務的な目標数値によって行動の方向性が示されても、目標達成のための手段や権限なしには機能しない。責任もインセンティブも働かないからである。このような観点から、責任管理単位(業績評価単位)は、主に以下の2つが多用されている。
コントロール・プロセス
一般に、マネジメント・コントロールのプロセスは、以下の4段階から成る。
BSC
会社が長期的に戦略を遂行するためのマネジメント・ツールとして、「BSC(Balanced Scorecard)」が注目されている。BSCは、財務・顧客・内部ビジネスプロセス・学習と成長の4つの視点から、それぞれ戦略と関連性が強い指標を選択する。特に重要な指標を「KPI(Key Performance indicator)」という。
内部統制
内部統制が世界的に重視されるようになったきっかけは、米国で起きたエンロンとワールドコムの会計スキャンダルである。これらの事件は、監査法人が粉飾決算や証拠隠滅に大きく関与していた。こうした事態を受け、2002年7月にSOX法(上場企業会計改革及び投資家保護法)が制定された。これは、全11章から成り、その中でも内部統制について述べた第4章404条が最重要である。日本では、2006年6月に金融商品取引法改正の一環として、内部統制報告書提出が義務付けられた。
内部統制の目的と構成要素
内部統制は、SOX法のベースとなったCOSOのフレームワークに準拠したものに日本独自のものを合わせた4つの目的と、SOX法に組み込まれたものに日本独自のものを加えた6つの構成要素から成る。
関連記事
マネジメント・ブック要約
前の部
今の部
グロービスMBA 第三部 アカウンティング 要約 後編
https://blog.chaotic-notes.com/articles/summarize-globis-mba-management-book-part3-vol3/