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グロービスMBA 第二部 マーケティング 要約 後編
今回は、書籍「グロービスMBAマネジメント・ブック」第二部「マーケティング」の要約となる後編記事をお届けします。
流通チャネル
流通チャネルは、企業が効率的に商品を届けるための重要な役割を果たし、製品と顧客の間にあるギャップを埋めるために、次の3つのフローに関わる。また、ファイナンス機能やリスク分担等の役割も担う。
参入障壁
流通チャネルは直販を除き、基本的に外部資源を利用しなければならない点で、他のマーケティング・ミックスとは本質的に異なる。競合に先立ち優良チャネルを確保できれば、それが参入障壁となって長期的な競争優位を築ける。
しかし、流通チャネルは、構築にとても多くの時間と費用を要し、構築後の変更が難しい。特に、環境変化で時代遅れになると、その対応の足かせになりかねない。また、人が絡むため、意のままに扱い辛く、動機付けやトレーニング等の働きかけが必要になる。
流通形態の類型
流通チャネルの形態は、次のように4つに分類される。
その他の流通形態
他にも、下記に挙げたような「マルチレベル方式」「フランチャイズ方式」「ライセンス方式」等の展開方法がある。
流通チャネルの構築プロセス
流通チャネルの構築は、次の5つの視点から行う。また、考慮すべき要素を念頭に置きながら、マーケティング目標達成のための最適な流通チャネルを考えなければならない。
(1) 流通チャネルの長さ
製品説明の必要性が高く、顧客が地理的に集中し、特定顧客の大量購入が見込める場合は、直販が適する。しかし、製品説明の必要性が低く、潜在顧客も分散している場合は、流通業者を通した方が良い。
(2) 流通チャネルの幅
チャネルの幅を厚くすると摩擦が置き、薄くすると潜在顧客を取りこぼしかねないということに注意が必要である。この決定には、主に3つの政策が取られる。
(3) 展開エリアの決定
全国展開を一斉に図る場合と地域限定から徐々に拡大する場合で、プロモーション方法も経営資源の必要量も全く異なる。また、地域密着型の流通業者は多く、取引メンバー選定に影響が出る。
(4) チャネル・メンバー選定
選定基準として、財務内容等の企業健全性・果たしうる機能・得意な製品カテゴリー・販売組織確立度・顧客の数と質、対顧客交渉力・顧客との人間関係・小売店売場獲得力・取引条件・物流能力・情報武装レベル・コントロールのしやすさ・自社ビジョンへの共鳴度等を用いる。
(5) チャネルの動機付け政策
チャネル・メンバーに対するインセンティブを検討する。
流通チャネルの再構築
企業を取り巻く環境は、市場成長や製品成熟化と共に変化する。
特に現在は、ITの進展により情報流に変化が生じ、ネットを利用した効率的な流通チャネルへの再構築が大きな課題となっていて、戦略見直しに伴うリスクとリターンを検討し、何らかの行動を取らなくては生き残ることが難しくなっている。
コミュニケーションの手段と戦略
コミュニケーション手段は、次の5つに大別される。
それぞれ長所と短所があり、顧客の態度変容に対する効果も異なるので、製品や顧客特性に合わせて、最適なコミュニケーション・ミックスを考えなければならない。
購買決定プロセス
マーケティングの最終目的は、顧客に自社製品を買ってもらうことだが、顧客が購買に至るまでには長い意思決定プロセスが存在する。一般に、認知・理解・愛好・選好・確信・購買の6段階のプロセスを経ると言われる。
コミュニケーション目標
消費者の態度変容段階によってコミュニケーション目標が異なるため、有効な手段の組み合わせを慎重に考える必要がある。
なお、AIDAモデルに、動機付け(Motive)、または、記憶(Memory)の「M」を加えた「AIDMA」や、確信(Conviction)を加えた「AIDCA」モデルも提唱されている。
このほか、マーケティング・リサーチによる定量化可能指標と組み合わせた態度変容モデルとして「AMTUL」(認知:Attention、記憶:Memory、試用:Trial、日常使用:Usage、忠誠:Loyalty)、インターネット上でのモデルとして「AISAS」(認知:Attention、興味:Interest、検索:Search、行動:Action、共有:Share)等もある。
プッシュ戦略とプル戦略
コミュニケーション戦略における重要な考え方の1つに、プッシュ戦略とプル戦略がある。
広告戦略
メディア戦略
メディア戦略の役割は「伝える場の確保」である。ターゲットのプロフィール・サイズ・エリアに合わせて、様々な特性を持つメディアを戦略的に組み合わせ(メディア・ミックス)、予算内で最大限の費用対効果を得なくてはならない。
クリエイティブ戦略
クリエイティブ戦略の第一歩は、企業が伝えるべき製品の属性を選び出すことである。次の第二歩は、企業が絞り込んだ製品の属性を、受け手に興味を持って受容して貰える広告表現に落とし込むことである。エンターテインメントやニュースの要素を用いて、企業が「伝えたい」メッセージを、顧客の興味を引くような「伝わる」メッセージに翻訳した、各メディアの特徴を生かす広告表現でなければいけない。
セールス・プロモーション
広告と並んでコミュニケーション戦略の中心に位置するのが「セールス・プロモーション」である。プル効果を主目的とする広告に対し、セールス・プロモーションは、顧客の関心を購買に直結させる意図を持つため、即物的な面が強い。
販売戦略
コミュニケーション・ミックスの中で営業担当者等による販売活動は、最もコストがかかるが、顧客を購買に向かわせる双方向コミュニケーション手段として極めて有効である。営業担当者の期待役割は、次のようなことが挙げられ、その中でも特に重要なのが、需要創造とテクニカル・サポートである。
新しいマーケティング潮流
顧客維持型マーケティング
これまでのマーケティングは、顧客創造に重点が置かれてきたが、それだけでは現在の厳しい競争環境を生き抜けなくなってきている。もちろん、新規にビジネスを始めるときは、新規顧客獲得を目的とするマーケティングは今後も必要である。しかし、不確実性の高い見込み顧客に対して多大なマーケティング資源を投じる従来型のターゲット・マーケティングは通用しにくくなっている。そのため、一度引きつけた顧客との良好な関係を維持することで、1人から最大限の収益を得る顧客維持型マーケティングにも力を入れる必要がある。
企業にとって顧客維持の意義は2つある。1つは、広告等を大量に打って新規顧客を獲得するよりも、少ないマーケティング・コストで収益を上げられることである。もう1つは、顧客からのフィードバックを製品開発等のマーケティング戦略に利用できることである。
類型
顧客維持型のマーケティング手法としては、「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」「データベース・マーケティング」等がある。
BtoBマーケティング
マーケティングの中でも特に法人顧客を対象とするものを「BtoBマーケティング」と呼ぶ。一般消費者向けのマーケティングと比べて以下のような異なる特性を持つ。
俯瞰思考
法人顧客による購買の意思決定の多くは、組織内外の数多い関係者の意向を受けて下される。BtoBマーケティングの活動において、各関係者が持つ関心事項を「俯瞰」して押さえることは大変重要である。さらに、顧客のビジネスバリューチェーンの中でどのように位置付けられているかを「俯瞰」的に把握することも、戦略を立てる上で不可欠となる。
ソリューション志向
製品がコモディティであるほど、顧客企業の関心はコストにシフトするため、製品に付随する付加価値を高め、競合との差別化が必要となる。「ソリューション志向」とは、コモディティ化による価格競争を回避し、顧客固有課題に対応して、独自価値を創造しようという考え方である。
レピュテーション
レピュテーション(評判)は、マーケティングの観点からは、ブランド力の重要な決定要因である。
消費者や顧客は、同条件であればレピュテーションの高い製品・サービスを購入しやすい。形のないサービスや、高額で簡単に試用できない製品・サービスは、レピュテーションが特に重要となる。
レピュテーションの効果は、これだけに留まらず、採用や従業員のモチベーションにも影響する。また、協力業者、投資家、企業を誘致しようとする地方自治体や国家等も強く意識する。なぜなら、その企業と関わることが、彼ら自身のレピュテーションを左右するかもしれないからである。
レピュテーション・マネジメント
人々は情報の断片を組み合わせてレピュテーションを形成するため、企業の様々な活動やコミュニケーションがそのまま伝わることを期待してはならない。
認識は、受け手が決定するということを強く再確認する必要がある。
レピュテーション・マネジメントは、広義には企業評判維持・向上活動全体を指すが、狭義には不祥事・事故対応、またはメディア対応を指す。特に、経営陣の発言や行動は、企業のレピュテーションに大きな影響を与えることから、欧米では経営陣を対象とした危機管理トレーニングやメディア・トレーニング等を実施している企業が多い。
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