グロービスMBA 第二部 マーケティング 要約 前編
今回は、書籍「グロービスMBAマネジメント・ブック」第二部「マーケティング」の要約となる前編記事をお届けします。
マーケティングとは
収益を齎す顧客の創造と維持が企業の継続的成長に欠かせないため、顧客ニーズを満たす製品を生み出し、顧客満足を高める努力が、マーケティングでは常に必要である。
セリングとマーケティング
マーケティングとは、「顧客に買ってもらえる仕組みをつくること」であり、「売り込む手段」を考えるセリング(販売)とは、明らかに異なる考え方である。
セリングの目的は、顧客との信頼関係を勝ち得る努力は重視せずに、目先の製品の1回の売上を最大化することである。これに対して、マーケティングの目的は、長く利益を齎す存在として顧客を中心として考え、繰り返し買ってもらうことで継続的に成長することである。
ニーズとウォンツ
顧客の欲求を表す概念として「ニーズ」と「ウォンツ」がある。
ニーズとは、衣食住などの生理的なことから、社会的・文化的・個人的なことに至る様々な事柄に対して、人間が感じる「満たされない状態」であり、ウォンツは、ニーズを満たすために製品化されたものを求める「具体的な製品やサービスへの欲求」である。
マーケティングは、顧客の本質的なニーズを捉え具体的なウォンツに繋げることが、中心課題である。
マーケティング部門の役割
外部環境の中で最重要要素の一つは、日々変化していく市場環境である。その構造的変化をいち早く捉え、現在または将来の環境に合致した経営戦略を策定することで、市場から拒否されないようにする必要がある。そのような市場環境の変化を踏まえて、企業の進むべき方向性を見出し、経営戦略や事業活動に落とし込んでいく役割を果たすのがマーケティングである。
マーケティングは、顧客の期待を明確化し、ニーズの充足を保証するために、企業が持つ生産・営業・開発・財務・人事などの様々な機能を統合し、それぞれの役割を最大限に果たさせる役割を担っている。
マーケティング・プロセス
マーケティングの観点からビジネスを構築していくためのプロセスは、以下の6つのステップに大別される。このプロセスは、必ずしも一方向的な流れではなく、行きつ戻りつすることもある。また、実際には、制約条件等により動かせない要素があるため、遡って整合性をとることも多い。
(1) 環境分析と市場機会の発見
マーケティング環境を分析することにより、市場の機会と脅威、自社の強みと弱みを見極め、自社にとってのマーケティング機会を発見する。
(2) セグメンテーション
環境分析の結果から、不特定多数の人々を「セグメント(同じニーズを持つかたまり)」に分ける。
(3) ターゲティング
分類したセグメントの中から、自社が事業を展開するのに最も相応しいセグメントを選定する。
(4) ポジショニング
競合製品に対して、自社製品をどのように差別化するかを決定する。自社製品が特別な価値を有するものと、顧客に位置付けられるようにするための活動である。
(5) マーケティング・ミックス
ターゲットとするセグメントに対して働きかけるための具体的なマーケティング施策を考えていく。この時、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(コミュニケーション)の4Pについて、組み合わせが最良であり、整合性をとれるようにする。
(6) 施策の実行及び評価
施策の実行後には必ず結果を評価して、上手くいっていない部分については原因を探り、戦略を見直す。
マーケティング環境分析
マーケティング環境分析では、マクロ環境・市場(顧客)・競合に関する外部環境と、自社の経営資源・強みと弱みなどの内部環境を明らかにしてから、SWOT 分析を行い、Key Success Factor(成功の鍵となる要因)を発見する。
マーケティング・リサーチ
マーケティング戦略を策定するときは、市場で起こっていることを把握し、自社のアイディア(仮説)が市場に受け入れられるかどうかを確認する必要がある。また、戦略をレビューする際にも、実施した施策がどれだけ効果的だったのか検証しなくてはならない。
そのため、マーケティングでは、市場調査やシェア分析、製品選好分析、販売予測、広告効果分析など、目的別に様々なリサーチが行われる。
仮説なきリサーチの弊害
リサーチでは、現状から考えられる仮説と予測される結果を必ず事前に考え、調査結果との違いを評価する「仮説検証型」のアプローチが望ましい。とりあえず手に入るデータを集めて、そこから最終結論を導く方法は、無駄が多く、誤った結論を得る可能性が高い。
リサーチのプロセス
リサーチは、目的の設定、仮説の設定、設計と実施、仮説の検証という4つの手順で行われる。
(1) リサーチ目的の設定
だれが、どのような目的のために、どのような情報を必要としているのかを明確にする。
(2) 仮説の設定
場当たり的に調べるのではなく、仮説を立てて分析すると、効率よく調査できる。
(3) リサーチの設計と実施
必要なデータを特定し、そのデータを収集するためのリサーチ手法やサンプリング、質問内容を決める。
(4) 仮説の検証
検証したい事柄に応じて様々な分析手法を用いる。例えば、製品やサービスを総合的に評価する時には、コンジョイント分析を用いる。定量リサーチでは、一つの変数だけを単独で分析するのではなく、それらの相関について分析する場合が多く、簡単な表計算ソフトが必要である。
市場戦略
市場全体に対して同一製品を同一のマーケティングで販売できれば、企業は効率的に収益を上げることができる。一方で、顧客満足度を最大化したければ、顧客一人ひとりに専用品を提供することが望ましい。
しかし、企業の経営資源が限られているため、各個人のニーズに応えることは難しい。対応できたとしても、膨大なコストがかかるだろう。そこで、企業にとっての「効率」と、顧客にとっての「効果」とのギャップを埋めるための考え方が、セグメンテーションである。
セグメンテーション変数
セグメンテーションは、どのような軸(セグメンテーション変数)で分けるか、がポイントであり、複数軸を組み合わせて使うことも多い。
以前は、切り分けが容易な地理的変数や人口動態変数が多用されていたが、最近は、消費者ニーズの多様化や個性化に合わせて、心理的変数や行動変数が重視されるようになった。例えば、行動変数としては、購買頻度や購買動機などがある。特に、顧客が購買にあたって何を重視するかという「KBF(Key Buying Factor: 購買決定要因)」は、重要な切り口となる。
セグメントは、単に細かく分ければ良いというものではなく、十分な売上高や利益を確保できる規模があることや、重要度に応じて優先順位を付けられるなどの条件を満たす必要がある。また、顧客層にアプローチし、顧客の反応を測定・分析することができるか等の実現可能性にも考慮しなくてはならない。
ターゲティング
どの顧客層(セグメント)をターゲットにするかを決めるのが、ターゲティングである。このとき、特に以下に述べる6点(6R)に注意し、総合的に判断しなければならない。
ポジショニング
ポジショニングは、ターゲット顧客に自社製品のユニークな価値を認めてもらうことで、競合製品に対して優位に立つことを目的とした活動である。ポジショニングの決定は、マーケティング・プロセスの中で重要なステップであり、その巧拙は製品の売れ行きや収益性に大きな影響を与える。
まったく同じ内容の製品やサービスであっても、ポジショニングが変わればマーケティングの施策は異なったものになり、高付加価値商品として売り出すなら、相応しい製品設計や価格設定、流通チャネル、販売方法などを考え、普及品としてであれば、手ごろな値段を付けて売ることになるだろう。
ポジショニング成功のための鉄則
ポジショニングは、製品コンセプトに落とし込まれ、注通チャネルやコミュニケーションなどのマーケティング・ミックス戦略を規定していく。そのため、ポジショニングを決定する時には、以下の4点を留意しながら、様々な角度から実現可能性を検討する必要がある。
(1) 顧客像が明確かつ適切
優れたポジショニングが想定する顧客イメージは、顧客の実像と彼らが他人にどう思われたいかが異なることが多く、実際にその製品を購入すると想定されるターゲット顧客と違う場合がある。
(2) 顧客に正確に伝わる
魅力的なポジショニングを考えていても、それをきちんと伝えるコミュニケーションの努力がなければ、顧客の頭の中に像は結ばれない。
(3) 顧客が共感できる
意図を正確に伝えるだけでなく、売り手の独りよがりにならず、製品を購入する顧客にとって意味がある重要なポジショニングでなければ、成功しない。
(4) 企業全体のポジショニングと整合している
製品のポジショニングが、売り手企業自体や既存製品のそれと整合していないと、顧客に混乱した印象を与えるだけではなく、既存製品の売上や企業全体のイメージにもダメージを与える可能性がある。
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