グロービスMBAマネジメント・ブック 第一部要約 前編
近頃、グロービスMBAマネジメント・ブックを理解する必要があり、何度も読み直すのは効率が悪いため、内容を要約しました。この記事は、第一部前編となります。
ギャップを埋める経営戦略
明確な経営戦略を打ち出すことは、勝ち組の企業になるための条件の1つである。企業が保有する経営資源には限りがあり、選択と集中について考えなければいけないからである。
経営戦略を策定することで、どのような強みを磨いていくか明らかになり、企業活動を支える内外関係者の共感を得たり、従業員の能力を十分に引き出したりすることが可能となる。
経営理念とビジョン
まず、経営理念は、企業の存在意義や使命を普遍的な形で表した基本的価値観であり、時代の流れを超えた長期的な視点で、社会と従業員に関する考えを語ったものである。
次に、ビジョンは、その経営理念で規定された経営姿勢や存在意義に基づき、自社が目指す中期的なイメージを、投資家や従業員、社会全体に向けて示したものである。
経営戦略
経営戦略は、経営理念及びビジョンと、企業の現実の姿との間にあるギャップを埋めるための具体的な方法論を示すものであり、全社戦略、事業戦略、機能戦略の3つの戦略レベルから成る。
全社戦略で考えること
全社戦略は、戦う土俵(ドメイン)を決め、他社よりも優位に立てる能力(コア・コンピタンス)を発揮し、維持するためのヒト・モノ・カネなどの配分(資源配分)を考える必要がある。
ドメイン
ドメインは、組織活動の指針となるものであり、企業の方向性を示すうえで非常に重要である。これを決定するということは、「戦う場所」を決めるだけではなく、「戦わない場所」を明らかにすることでもある。それは、次の2つの方法で決める。
(1) 製品軸から定義する方法
自社の持つ製品の優位性や特徴などを最も効果的に発揮できる領域を選んで、事業展開を図る。
(2) 市場軸から定義する方法
同じような性格を持つ顧客をひとくくりにして、その顧客層をターゲットとした事業を選択する。
コア・コンピタンス
コア・コンピタンスは、「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」と定義される。
見極めるための要素
これを見極めるためには、模倣可能性、移転可能性、代替可能性、希少性、耐久性の5つの要素について考える必要がある。一般に、競争優位は、他社が簡単に真似することや保有することが難しくて代替品も少なく、手に入りにくい上耐久性に優れていると、持続しやすくなると言われる。
どの要素が有効かは市場環境や競争環境によって異なり、競争優位を築けたとしても市場環境変化により陳腐化する恐れがあるため、継続的投資やコア・コンピタンスの再定義、新しい能力の育成などの努力が欠かせない。
資源配分
複数の事業を持つ企業の場合は、個々の事業の成否だけではなく、全社的な視点で適正な資源配分を考えなければいけない。適正な資源配分を行うためには、まず各事業の現状を明らかにしたうえで、事業目的の設定や投資方法の決定を行う必要がある。また、どのような事業を組み合わせるとよいかという判断も重要である。
外部資源の利用
不足している経営資源や能力は、社内育成以外に、他企業を買収して取り込む方法や、アライアンスやアウトソーシングなどのように外部資源を用いて補完する方法がある。
経営スピードや高効率性が求められる競争環境においては、自社に必要な機能や能力を十分に見極めることと、以下のメリットとデメリットを考慮しながら外部資源の有効利用を考えることが重要である。
- メリット
- コスト削減効果、自社で行うよりも高い付加価値が享受できる
- デメリット
- 情報流出リスク、社内にノウハウが蓄積されない
事業の捉え方と考え方
事業ライフライクル
事業ライフサイクルは、「ある製品や市場は必ず誕生から衰退までの流れを持ち、その段階に応じてとるべき戦略は異なる」とする考え方であり、それを4段階に分けて事業をとらえる。
(1) 導入期
世の中の流れやニーズに即応したアイディアを持ち、それを事業化するノウハウが求められる。
(2) 成長期
競合他社の参入が増える。他社との差別化や、事業拡大に応じてマネジメントノウハウの改良が必要。
(3) 成熟期
競争上の優位性を築けなければ敗者。業界構造が固定化され少数企業が大部分のシェアを獲得し、低価格大量販売の戦略をとる。
(4) 衰退期
新規投資不要のため一部のリーダー企業は利益を出せるが、収益安定継続のために効率性追及が不可欠。他企業は、撤退か新たな価値創造を求められる。
事業ポートフォリオ
事業ポートフォリオは、様々な事業機会と自社の経営資源のバランスをとりながら、事業の選択や組み合わせを考えていく方法である。検討するに当たって、少なくとも3つの視点で考えると良い。
これを考えるためのフレームワークとして、次の2つがある。
- PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)モデル
- ビジネス・スクリーン
どちらが優れているかではなく、両社の利点と限界を理解しながら、目的に応じて使い分けること。
(1) PPM モデル
「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)モデル」は、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が考案した。
これは、前述の「事業の魅力度」と「競争上の優位性」の評価を単純化したもので、「事業ライフサイクル」と「経験曲線」の考え方をベースにして、「市場成長率」と「相対マーケットシェア」という2軸でマトリクスをつくり、事業を次の4つの事象に類別する。
しかし、市場成長が鈍化しても市場が衰退せずに再活性化することや、低いシェアでもプラスキャッシュフローや利益を生んでいることもあるため、PPMはシンプルで分かりやすいがそういったことに気を付けなければならない。
(2) ビジネス・スクリーン
「ビジネス・スクリーン」は、GE(ゼネラル・エレクトリック)とマッキンゼー(マッキンゼー・アンド・カンパニー)が考案した。
これは、各事業を「事業地位」と「業界の魅力度」の2軸で3段階評価し、9個の象限で3つずつ色分けしたマトリクス上に位置付ける。
3段階評価で分類が精密になり、撤退や資金回収について性急な結論に達する恐れが少なくなるメリットがあるが、指標の主観的な取り方に加えて内部データを多用していることから他社との比較が困難というデメリットがある。
成長ベクトルの選択
事業拡大マトリクス
事業の拡大は、それまでに築いた資産や既存事業での成功体験の上に次の事業を展開するほうが、成長の確率が高くなる。これを概念的に示したのが、アンゾフが提唱した「事業拡大マトリクス(製品・市場マトリクス)」である。
このマトリクスは、事業拡大を「製品軸」と「市場軸」で捉える。企業の事業拡大は、既存事業の市場浸透から始まり、成長が難しくなると、下記のように、右(新製品)、下(新市場)、 右下(新製品・新市場)の3種類の方向へ拡大する。
多角化において、既存事業との関連性は、市場と製品が新しければ低くなり、流通や技術などの共通性があれば高くなる。これらの共通性を反映して、アーカー教授は、アンゾフのマトリクスに第3の軸を加えている。
多角化のメリットとジレンマ
多角化は、流通チャネルや技術、製造、人材、ブランド、ノウハウ、管理などに関して、コスト面や付加価値面でのシナジーが得られ、企業全体として収益源が複数になることで、リスク分散の効果が期待できるメリットを持っている。
一方で、次のような4つのジレンマが存在する。
- 将来にわたり成長が見込まれる魅力度の高い分野を選ぶ企業が多く、競争が激化しがちである。
- 自社の経営資源をすぐに有効活用できる分野を新規事業に選ぶと、結果的に既存事業での競争関係がそのまま持ち込まれてしまい、優位性構築ができない恐れがある。
- 新規事業を成功させるために本業とは違う行動様式や企業文化が必要な場合、既存のものが事業展開の障害となる。
- 多角化を重ねることで自社の事業ドメインが曖昧になって本業を見失い、企業の求心力が弱まったり、経営資源の分散化によってどの分野でも優位性を保てなくなる。
しかしながら、多角化を諦めて現状維持すると、既存事業の成熟化と共に企業自体が衰退していく恐れがあり、成長と持続的競争優位を確立するためには、これらのジレンマを理解した上で可能な限り解決する努力が求められる。
グロービスMBAマネジメント・ブック 第一部要約 前編
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