あなたの住まいは大丈夫?液状化リスクの簡単な調べ方

本記事では、数ある自然災害の中から地震に主眼を置いて、みなさんに最も影響を及ぼすであろう液状化が発生するリスクを、地理院地図で簡単に調べる方法をまとめました。

はじめに

昨今は、大地震が続いており、今年の元旦にもM7.6規模の能登半島地震が発生しました。
その後で、液状化現象のニュースが頻繁に話題になったのは、今もまだ記憶に新しいです。
この現象は、過去の2018年北海道胆振東部地震、2016年熊本地震及び2011年東北地方太平洋沖地震でも、同様に起こりました。
液状化は、ほとんど人命に関わる直接的な被害になりませんが、致命的な二次災害を複合的に引き起こすため、話題に取り上げられる、と考えています。

さて、何となくの知識や理解のままだと、地図を見ただけでは実感が足りず、災害対策におけるリスクマネジメントに支障があります。
そのため、この記事では液状化が何かを理解していくことから始めます。

液状化現象を理解する

液状化とは、地震が発生した時に地盤が液体のような状態になる現象のことを言います。
このセクションでは、その現象が起こりやすい地層及び地形と、発生メカニズム及び影響・二次災害についてまとめたものを説明します。

起こりやすい地層

地下水位が高く、表層まで水で飽和した、深さ15から20メートル以内の締りの緩い砂質層です。
この砂質層の粒径が、細粒から中粒程度の砂で、粒径が揃っているほど可能性が高くなります。
一方で、これより細粒になると、粘着力による抵抗が生じるため、発生しにくくなります。
また、粒径の大きい礫になると、透水性が大きく水が抜け出しやすいため、液状化に至りません。

起こりやすい地形

海岸埋立地や干拓地、旧河川敷・旧池沼・旧河道の埋立地、砂丘の内陸側縁辺部、砂丘間窪地、潟起源低湿地、自然堤防などです。

発生メカニズム

通常時

砂粒子同士が角を接触させる形で突っ張りあい、その隙間を地下水が満たしており、地盤をゆるく支えている状態です。

液状化中

地震による振動で砂粒子が揺すられることで、それら同士の支えが次第に外れてばらばらになり、圧力が高まった地下水に浮いた状態になります。

液状化後

圧力が高まった地下水が砂と共に地表へ噴出し、地層の中身が抜け出すため、沈下・亀裂・陥没・隆起などの地盤変形を起こします。

影響・二次災害

(1) ライフライン施設の破壊

地中に埋設されている上下水道管とガス管が破損したり、地上の電柱が倒壊したりすることで、水道・電気・ガスなどのライフラインが寸断され、生活障害を引き起こします。

(2) 交通網の機能停止

橋梁の破壊、道路の盛土の滑り出し・沈下、道路そのものの損傷により、緊急避難や救助活動に支障をきたします。それに加えて、通行障害も発生するため、物流が滞ります。

(3) 住居損傷による悪影響

傾いている等の機能障害がある住居に住み続けることで、めまいや吐き気などの健康被害を受けます。

地理院地図で調べる

地理院地図は、国土地理院が発信する日本国土の様々な情報をまとめたウェブ地図です。
その中に、「地形分類」と呼ばれる、土地の成り立ち・形態・性質から、発生しうる自然災害リスクを調べられる地図があります。
このセクションでは、その地図の使い方を説明しながら実際に検索してみます。

地形分類の設定方法

使い慣れていないと設定が難しいため、吹き出し付き画像で説明します。

(1) 地図の一覧を表示

地理院地図を開いた後の世界地図画面で、左上の地図アイコンをクリックします。

地形分類の設定手順その1

(2) 地図の種類を選択

左側に表示されるリストから、「土地の成り立ち・土地利用」をクリックします。

地形分類の設定手順その2

(3) 地形分類を選択

「土地の成り立ち・土地利用」の地図一覧の中から、「地形分類(ベクトルタイル提供)」をクリックします。

地形分類の設定手順その3

(4) 『地形分類(自然地形)』に設定

「地形分類(自然地形)」をクリックすると、選択中の地図に追加設定されます。

地形分類の設定手順その4

地形分類の検索例

筆者が勤めている会社の入居ビルと、1月末に発表された「<首都圏版> 2024年 LIFULL HOME’S みんなが探した!住みたい街ランキング」から、借りて住みたいランキング一位の「本厚木駅」周辺及び買って住みたいランキング一位の「勝どき駅」周辺の3つを検索してみました。

(1) 会社の入居ビル

まずは、筆者が勤めている会社の入居ビルがある目黒駅周辺を見てみましょう。
地形分類(桃色字)が「山地」と「台地・段丘」の境界にまたがるように、ビルが立っています。
「山地」の自然災害リスクは、「大雨や地震により、崖崩れや土石流、地すべりなどの土砂災害のリスクがある」です。
一方、「台地・段丘」の方はと言うと、「地盤は良く、地震の揺れや液状化のリスクは小さい」となっています。
液状化のリスクは小さいですが、地すべり等の土砂災害のリスクはあるようなので、良い土地とはっきり言い切れないのが残念ですね。
とはいえ、ビルの用途は、居住用ではなく商業兼オフィスなので、問題はないのかな。

地形分類の利用例その1

(2) 本厚木駅周辺

次に、借りて住みたいランキング一位「本厚木駅」の周辺をみてみましょう。
地形分類は「氾濫平野」。この地形の自然災害リスクは、「河川の氾濫に注意。(略)液状化のリスクがある。沿岸部では高潮に注意」です。
本厚木は、小田急小田原線で新宿までの所要時間がおよそ50分程度と、郊外エリアの中では都心方面へのアクセスは良好です。
しかし、河川氾濫・液状化・高潮といった複数の自然災害リスクがあることを考慮すると、この一帯に借りて住もうという考えは、良い案とは言えませんね。

地形分類の利用例その2

(3) 勝どき駅周辺

最後に、買って住みたいランキング一位の「勝どき駅」周辺もみてみましょう。
地形分類は「旧水部」。この地形の自然災害リスクは、「地盤が軟弱である。液状化のリスクが大きい。沿岸部では高潮に注意」です。
読んでわかる通り、前述した本厚木駅周辺の完全上位互換となる自然災害リスクを持っています。
東京都内の新築マンション価格が昨今の高騰しているといえども、居住用には不向きですし、投資用としてもリターンと釣り合ってないのではないでしょうか。

地形分類の利用例その3

おわりに

液状化のメカニズムと、引き起こす影響や二次災害を見て、地理院地図の地形分類で検索してみました。
その恐ろしさの一端を感じてから、検索例として採用した「住みたい街ランキング」を見ると、液状化含め自然災害リスクを身近に感じていない人が少なくないと分かります。
借りて住むにしても、買って住むにしても、なるべく保有リスクは最小限にするべきです。
みなさんが、今後そのような機会があれば、この記事を活用していただければ幸いです。

参考文献

液状化

地理院地図

住みたい街ランキング

あなたの住まいは大丈夫?液状化リスクの簡単な調べ方

https://blog.chaotic-notes.com/articles/search-liquefaction-risk-from-gsi-maps/

作者

Hiroki Sugawara

投稿日

2024-03-04

更新日

2024-03-04

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