グロービスMBA 第三部 アカウンティング 要約 前編

グロービスMBA 第三部 アカウンティング 要約 前編

今回は、書籍「グロービスMBAマネジメント・ブック」第三部「アカウンティング」の要約となる前編記事をお届けします。

アカウンティングとは

アカウンティングとは企業会計のことで、Accountには「説明する」という意味もある。企業は、ステークホルダーに対して経営活動の実績を説明する「Accountability(説明責任)」を負う。
ステークホルダーとは、企業活動によって直接的・間接的に影響を受ける人々や団体を指す。企業との利害関係は必ずしも一様ではなく、説明すべき内容は相手により異なる。

情報開示制度

企業の所有者は株主であり、株主から経営を委託された代理人が社長や取締役等の経営者である。経営活動に関する情報収集では、「情報の非対称性」によって株主よりも経営者の方が優位に立ちやすい。情報の非対称性が存在すると、経営者は情報面での有利な立場を利用し、株主の知らない所で個人の利益を追及できる。そうした事態を防ぐため、情報の非対称性を是正するディスクロージャーが重要となる。

情報開示制度

経営者の説明責任

経営者の説明責任

(1) 財務会計

財務会計は、株主会社における所有と経営の分離の理念に基づき、企業が会計原則に従った財務諸表により、外部ステークホルダーに対して客観的かつ公正な企業の姿を開示することが目的である。

財務会計

(2) 税務会計

税務会計は、企業が課税所得や法人税額を算出し、それを税務当局に申告・納税するときの基礎となる報告制度である。税務会計は法人税額を算出することが主目的である。

(3) 管理会計

管理会計は、会計情報を用いた企業内部の経営管理手法で、経営状況を内部的に把握することが目的である。具体的には、損益分岐点分析や標準原価の把握、差異分析等の手法がよく用いられる。

期間損益計算

アカウンティングは、「企業は永遠に継続する」というゴーイング・コンサーン(going concern)の前提に基づくため、存続期間をある一定のサイクルで人為的に区切り、各期間の経営活動と各期末の財務状態を捉える。1年間の区切りを「会計年度」と言い、「決算」で期末の企業財産の状態を確定させる。
各期間の経営成績を正しく示すために、期間損益計算に基づく必要がある。どの時点で収益と費用を認識するかが、利益確定の問題となる。その基準として、現金主義・発生主義・実現主義がある。

収益と費用の認識

現金主義・発生主義・実現主義

企業活動の実態を考えると、現金主義による期間損益計算では経営成績を正しく示せない場合が多い。そこで、発生主義や実現主義によって、適切な期間損益計算を可能にする。
費用計上は原則的に発生主義が基準となる。発生主義の場合、支出と費用が一致しないことがあるので注意しなければならない。これに対して、収益計上は現実主義が用いられる。実現主義は、経済的価値の増加が実現した時に収益を認識する。

会計原則

会計原則は、費用収益対応原則と保守主義の原則とのバランスの上に成り立つが、最近は特に公開企業において保守主義が重視される傾向にある。

費用収益対応原則

費用収益対応原則とは、発生した費用のうち、その期の収益獲得に貢献した部分だけをその期の費用として測定・認識する。減価償却はその典型例である。翌期以降の償却分をそれ以降の収益獲得に貢献する「資産」として計上し、決められた分を差し引く「費用」を毎期計上する。

保守主義の原則

費用収益対応原則に対して、費用や損失の認識は早めにという「保守主義の原則」と呼ばれるルールもある。引当金等がその一例で、今期に損失が発生していなくても、将来費用となったり、被害を受けたりする可能性が高い場合は、早めに計上する。

財務諸表の要

財務諸表は、企業活動における財産の状態や、その変化(移動の経緯)を示したものである。財務諸表の中で、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書が要となる。

営業サイクル

原材料や部品を仕入れ、工場等で製品を生産し、販売する。そして、売上代金を回収し、得た利益を分配・再投資する。企業は、こうした一連のプロセスを毎年繰り返しながら成長する。この企業活動のプロセスを「営業サイクル」と呼ぶ。
営業サイクルに関わる企業活動は、営業活動・財務活動・投資活動の3つに分けられる。

製造業における営業サイクル

損益計算書

損益計算書は、ある一定の期間(通常1年)における経営成績を示す。過去1年間の成果は、主に営業活動による成果と、それを補完する財務活動の成果によるものである。具体的にどのような企業活動によって生じた利益なのかを、要因毎にブレークダウンして表していることが特徴である。

損益計算書

貸借対照表

貸借対照表は、ある時点(決算期末時点)での資産内容を明らかにしたものである。主に財務活動と投資活動の結果が示される。貸借対照表は、資産の具体的運用形態を示す「資産」と、その資金調達源泉を示す「負債+純資産」から構成される。ただし、米国企業基準で作成された連結財務諸表を提出している会社の場合、資産・負債・純資産の3区分ではなく、純資産を少数株主持分と資本に分けた4区分となる。

営業サイクルにおける貸借対照表

資産

資産は、流動資産、固定資産、繰延資産に、通常分類される。

資産の分類

負債

負債とは、営業サイクルに関わって生じた債務。長期借入金や社債等が該当する。また、各種引当金も負債である。

負債の分類

純資産

純資産とは、株主資本、評価・換算差額等、新株予約権、少数株主持分の4つに分類される。一般的に純資産が負債に比べて厚いほど健全と言える。

純資産の分類

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は、各期の現金及び現金同等物の増減を整理して示したものである。企業会計は一般的に発生主義・実現主義であり、必ずしも利益・損失と現金の増減が一致しない。帳簿上は利益があっても、資金繰りで倒産(黒字倒産)することもある。したがって、事業継続のために実際の現金の動きも把握する必要がある。

作成方法

営業活動により生じるキャッシュフローは、直接法と間接法で把握できる。直接法は、営業活動から生じる現金入金と支出を直接算出し、間接法は、当期純利益に減価償却費を加え、さらに貸借対照表上の各項目の増減を加えて機械的に現金増減を算出する。実際は、間接法で作成されたものが多い。

見方

貸借対照表との関係で現金の動きを考えると、おおむね資産増加は現金減少を、負債・純資産増加は現金増加を意味する。現金は多ければ良いわけではなく、発展段階や業種に応じて適正水準かどうかがポイント。また、企業の発展段階に応じて資金の流れは変わる。成長中は、営業活動による現金収支はマイナスに、投資活動では活発な設備投資によりマイナス、それらを支えるための積極的な資金調達で財務活動はプラスになる傾向がある。安定期は、営業活動はプラスに転じ、投資活動はマイナスだが支出額は減少するため、財務活動はほぼ均衡状態となる。成熟期は、営業活動の現金収支はプラスに、投資活動は抑え気味で、財務活動では返済が多くなるため、マイナスになる傾向がある。

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グロービスMBA 第三部 アカウンティング 要約 前編

https://blog.chaotic-notes.com/articles/summarize-globis-mba-management-book-part3-vol1/

作者

Hiroki Sugawara

投稿日

2025-05-19

更新日

2025-05-19

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